兄の忠告|朝田ねむい【全1巻】
こちらは、表題作『兄の忠告』を含めた5作品が収録されている短編集です。
ボーイズがラブするというよりも、世にも奇妙な物語のような風合いの作品が多い気がします。
ああいう雰囲気の、ちょっとコミカルで不思議なショートが好きならとても良いと思う。
相変わらず映画のような画面の切り取り方をする作者さんだなぁと思いつつ、
どうやらこちらがデビュー作のようです。まじか。
朝田ねむいさんの作品で特に好きで心地良いなと思うところは、キャラクターとの距離感。
キャラクター同士の関係性に関わるような距離感ではなくて、
キャラクターと、読者の距離感。
特に『兄の忠告』がドラマや映画のように見えるのは、内面描写で読者を没入させるのではなくて
情景描写や状態描写で読者が把握していくタイプだからなのかも知れない。
確かに物語上、主人公はいるのだけど割とどの登場人物も同じ温度で描かれてる感じが、
好きに読んでいいよと言われているようですごく好き。
この距離感がすごくうまくハマってるのが表題作『兄の忠告』。
兄弟ものでグレてる弟を諭すお兄ちゃんの言葉が、
1回目はそれこそ普通にお兄ちゃんからの小言にしか聞こえないものの、
2回目に聞いた時に「ガチの忠告やんけ」ってなる瞬間の面白さが堪らない。
で、一番好きなのが、『波の音が聞こえる』
恋に落ちては破れて、その鬱屈を見事エログロスプラッター作品に昇華し続けてきた作家と編集者、
そして新しい恋人の青年のお話。
試し読みの範囲外なのが悔やまれて堪らないんだけど、
もうとにかく、最初の2Pだけでも見て欲しい。
それだけでこの作家さんがいかに 恋するとすっとこどっこいになるタイプ なのかが分かるからああああ。
最高だと思う、この開始2P。
何度か「見間違いかな?」って思ってページ行ったり来たりしちゃったよ。大好きこれ。
『波の音が聞こえる』は、
このわずかなページ数の中で作家先生が変化していく様子もすごく好きだなあ。
呪詛と怨嗟に満ちたからこそ書けていた作品が、穏やかな恋で魔法が解けて書けなくなって
でもだからこそ今までとは違う作品に向かえるんじゃないかって
伝える編集者さんがね! またいいんですよ。
とてもストレートに先生と作品を大事にしてくれてるのが伝わってきて良いんですよ……。
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