Loved Circus|朝田ねむい【全1巻】
惚れた風俗嬢に全財産貢いでキレイに破綻し、練炭自殺を図った主人公・ケイ君が拾われたのは、ゲイ向け風俗店サーカス。
サーカスで借金返済しつつ、同じような訳ありのサーカス員4人が織りなすお話。
FOOOOOO朝田ねむいさんの作品だFOOOOOO!!!!!
Dear,My GODが好きすぎて購入しちゃった。あとまだ2冊あるの。
連載中の分冊作品もあるのだけど、これはきっと連載終了後に描き下ろしが増えて一冊にまとまるはずだ。
きっとそうだ。
Loved Circusの舞台となる<サーカス>は、
主に借金面で訳が出来てしまった人々が返済に向けてしたたかに働いている場所です。
そしてこの作品で一番好きなのが、この<サーカス>という舞台。
このサーカスという場所は、風俗店でありながら再出発を促すとても優しい場所として描かれてます。
そして決して終着点ではなくて、次のどこかに行くために留まっている場所でもあります。
まるで踊り場のように。
主人公ケイ君の視点を通しながら、踊り場にいる他の3人の留まり方が描かれ、
次の場所に行く様子までしっかり描き切られている。
だからすごく読後感が良いんだ。
ケイ君は人生まるごとリセットして再出発をして、
愛に生きるキャラクターも居れば、恋心のもとに堅実に行こうとするキャラクターも居る。
そして4人のうち最後のひとりは、新しい<サーカス>を立ち上げる。
そして<サーカス>を語るなら、もうひとりの主人公・シロさんが欠かせない。
ひとときの夢を売るサーカスに生まれて、サーカスで育ってきたシロさんが欠かせない。
ケイ君から見えるサーカスと、シロさんから見えるサーカスの違いが物凄く良いんだよ。
そしてシロさんが居るから、このサーカスがどれだけ優しい場所で、
サーカスの中にいることでどれだけ守られていたのかが分かる。
でもどれだけ優しくても、サーカスは終着点じゃない。
自分の欲しいものや、行きたい場所を見つけたら去る場所なんだ。
4人のわちゃわちゃした同居就労ライフを描きながら、
やがて皆入れ替わって去っていく様子が散りばめられているところがすごく好きなんだ。
しかも、居なくなることが寂しいってところまで描かれてるところが好き。
次の場所に行く喜びと、一緒に過ごしていたものがなくなってしまう淋しさがある。
うおおおおもうホント、
シロさんとサーカスの関係が爛れてて堪らない。
サーカスで生まれた戸籍すらなかったシロさんには、
確かに救おうとする手も手段も差し伸べられていて、それは今も差し伸べられているのに
シロさんだけがそこから抜け出そうとしないし、かたくなに戻ろうとする。
自分が生まれた場所に帰りたがってる。
この閉塞感の素晴らしいところは、たしかにシロさんがそれを欲しがってることなんだ。
心の底から、今あるサーカスと共にありたいと思ってる。
だから余計になんて哀れな人なのかと、思いたくもなってしまう。
これはDear,My GODのリブにもとてもよく似ている。
シロさんにとってサーカスは自分で、自分はすなわちサーカスで、
まるでへその緒が繋がった母体と胎児のようで、
ずっとその母体を維持するために養分のように誰かを取り込んでは見送ってきたシロさんが
ようやく生まれ直そうとするためにケイ君を手放すシーンが、すごく胸にクる。
Loved Circus もう愛しくて堪らないのは、
「生きてさえいればどうとでもなる 生きていることが喜ばしい」
色々と(主にお金を)無くして、踊り場に溜まって、凝って、
それでも生きていくことは出来るし、変わっていくことも出来るし、
やっぱり 生きてることが喜ばしい ってひとことに尽きちゃうんだ。
完全にシロさんの話になってるけど、
同じようにサーカスで働いてる面々やお客さん、オーナー夫妻に至るまで
ものすごく魅力的に描かれててほんとに驚く。
一人として便利な舞台装置になってない。
考えて、迷って、時々笑って楽しんで、そうやってここに集まっている感覚がすごく良い。
朝田ねむいさんの作品の根底であり、醍醐味である、この絶妙な「人間臭さ」がほんっとうに好きです。
善いことをしている人も、悪いことをしている人も、同じ温度で描ききってくれているような気がする。
作品全般から感じるこの骨太な心地良さは、
どこか私がファンタジーに求めているものに似ている気がする。
その世界があり、世界に生きている彼らがあり、結果的に彼らは悲しんだり喜んだり、その一環で愛や恋を語るかもしれない。
そういう温度感がすごく好きなんです。
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