渾名をくれ|新井煮干し子【全1巻】

渾名をくれ

渾名をくれ

[著]新井煮干し子

●著者 新井煮干し子
●発行 祥伝社
ふしぎなともだち であの絶妙な距離感を描いてくれた新井煮干し子さんの作品で、
人気モデル・ジョゼと人気イラストレーター・天羽の、これもまた絶妙な距離感のお話です。


信仰の話が好きだと言ったな。大好きだ。
あとさらに性癖に突っ込むなら、偏愛の人と博愛の人のペアも大好物です。
渾名をくれ は博愛とか偏愛とは少しばかり違うけれど、
人として好きなモデルと、もはや崇拝している絵描きの間にある距離が堪らない。

この作品の好きなとこはもう、天羽の崇拝っぷり。
あとがきで作者さんが「信仰の話を描きたかった」と書かれてる通り、
対ジョゼの天羽の崇拝っぷりたるや……。

この崇拝の素晴らしいところは、崇拝が崇拝としてもはや別人格を成し始めているところなんですよ。
確かに憧れのスタートはジョゼ自身にあったとしても、
天羽はすでに「ジョゼ」を作り出してしまっていた。
ジョゼ本人にも見せられない、天羽だけのジョゼ。天羽だけの神様。
この乖離!!!!

天羽さんにとってジョゼは神様だけど、その信仰の自己中心的なところもすごく好き。
まるで滅私のように、ジョゼが望む形であればすべて許容しそうなのに、ジョゼを自分の隣に置くことだけは出来ない。
出来ないというよりも、その選択肢をすら考えてない。
(作品を通してこれは変化をしていきますが)
創作の源泉であり、自分の根幹であり、そしてすべてがそこに収束するジョゼはとても尊いのに、信仰の根っこにあるのは結局自分の内面であり世界っていうのが、実に「人の信仰」のように思えてすごく惹かれるんです。
そしてそれすらも、ジョゼは愛と言う。

美しい姿のジョゼ。
美しい絵を描く天羽。

誰もが彼らを愛している というのは作中のセリフです。
そう、彼らの姿を誰もが愛していて、では彼らは何を愛しているのか。
渾名をくれ の魅力は、ジョゼと天羽の1:1の関係性と、まるでギャップのある彼らの生活風景。
ふしぎなともだちに描かれていたあのテンポの生活風景の中で、
ジョゼと天羽の2人の関係性だけが妙な異彩を放ってる。

この関係性を際立たせるのが、3人目の登場人物の剣くん。ジョゼのモデル仲間。
ジョゼと剣君、天羽と剣君、剣君と一緒にいるふたりは、まるで普通の人なんだ。
職業:モデル と 職業:絵描き になる。
それが ジョゼと天羽 になった途端に、互いに別の何かを愛と呼ぶ関係になる。
そしてその関係になることに気付いてるのは、ジョゼだけなんだ。

天羽はそれを愛と言う。
ジョゼを形作るすべてが美しく、描くものはすべてジョゼに繋がっていった。
ジョゼは神様で、それはもう、育ちきってしまった神様で、
いつかジョゼ自身も天羽の信仰に答えるような神様とヒトの間で揺れ動いていて、
そして先に神様を捨てたのは、ジョゼだった。

ラストにかけて、神様を捨てたジョゼと、天羽の生んだ神様のジョゼが天羽を挟んで対峙するシーンがあるんですよ。
この迫力が、凄まじい。

渾名をくれ は何度読んでもどれがどうなってるのか
何かもう脳みそフル稼働させて読んでる気がする。
こう……分かりやすい話ではないというか、ドストレートに伝わってくるものよりも
ひたひたと読み進めたり解読するような読み方をしてしまう。
そしてその解読も途中で行き詰まってしまうんだな。
感覚として何かありつつも、それを言葉にすることの難しさよ。
また時間を置いて、じっくり読み直したらまた何か生まれるかなあ。


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