君はパーフェクト|未散ソノオ【全2巻】
世話焼きパーフェクトイケメンの創也くんと、ものぐさ無頓着のゆずくんのお話。
いやもうこれすっごい。
ソノオ先生の独特なマイペース人間、精度がほんとめちゃくちゃ高いな。
何しろすごいのが、「世話焼き」×「ものぐさ」っていう設定の活かし方。「世話焼き」も「ものぐさ」も、割と王道な組み合わせかつ王道の属性なのに、周囲にあたえる影響や印象をごりごり掘り出してくれてるところがすっごく良い。この切り口めちゃくちゃ好き。
世話焼き属性の創也くんは、いわく「病的な世話焼きで体力と記憶力が無尽蔵」なタイプで、ひたすらひたすら無尽蔵に与えることが出来てしまうタイプで、与えたいタイプ。
で、与えて与えて、相手が依存して、ダメになる。
ひたすら与えられると人はダメになる。
これがまた、純度100%の善意かというとそうではなくて(それに善意だけではやりきれない)、自分でも抑えられない性分ってところがとても良いです、とても良いです。
この自分じゃ抑えられない衝動持ちと、それを本人以上に理解してくれる人、という関係は、ソノオ先生のタイラントの二人も思い出しますね。
そして、この作品で最高に好きなのが「世話を焼かれるのにも才能が要る」ってところなんだよ!!!!
才能!!!! 世話を焼かれる才能!!!!
これ、決して感謝をしないだとか、世話を焼かれ慣れるような才能ではなくて、あまりにも強烈な「ぶれない」力が近いのかもしれない。
与えられ「慣れる」ことがなく、与えられても与えられなくても、常時一定のテンションを保っていられる力。それでいて自然に与えられることを受け入れて、感謝を出来る力。
これすごくないですか、この観点。
めちゃくちゃ好き。
あまりにも主従の主力に満ちている。
君はパーフェクトの面白さは、世話焼き属性の人がもうひとり出てくるところにもあるぞ。
そして世話焼き属性の人に魅力的に映るゆずゆずの描写もとても好き。
尽くした分を余すところ無く受け入れて吸い取ってくれる、そしてそれを昇華してくれる。
ゆずくんは「世話を焼かれる才能」があるのに加えて、ちゃんと「創也くんはそれがしたいのだ」ってことを知ってくれてるところもとても良い。
ありのまま・するがままを許してくれるっていうある意味自分が自然にいられる状態にしてくれる。
そして何しろ最高なのが、「過剰な世話焼き」たちの会話。
二人目が出てくることで、この「世話焼き」が普通の人間にはどう作用してしまうのか、そして本人たちもそれは異常であると知りどう折り合いをつけているのかが分かる。楽しいいいい。このあたりの会話すごく好き。
「木関さんだってそうでしょう ダメにしたことあるでしょう 友達とか」
君はパーフェクト/未散ソノオ 83P
「あるよ それ楽しかったの?君 だったら軽蔑する」
「全然」
『だったら軽蔑する』 の良識感すごく良くないですか。
友達をダメにすることが決して望ましい関係ではないことなんて、当然のように分かってる。
「量で散らすしかないですよ こんなの 私たちみたいなのは 普通の人には毒なんです」
君はパーフェクト/未散ソノオ 85P
過剰にあふれる世話焼きは、普通の人に毒として働くっていうところすごく好き。
そしてそれを自覚しているところもとても好き。
自分の性分も、それが普通の人にどう働くかもどちらも自覚してどちらも理解しているけれど、どちらもどうにもならないんだ。
それとは別に、この過剰供給同士の会話も面白くて好きです。
なんというか本当に、性分とある程度距離を保てるようになった人たちの会話なんですよ。
自分の中にある病的なまでの世話焼きの衝動を、無くせる訳ではないけど、飼いならせるようになってきた人たち。
限りなく正気の人たち。
自覚的にも、無自覚的にも、ただ一方的に相手をダメにするようなことは絶対にしない。
ソノオ先生の描くキャラクターのこういう面、見ていて安心できてとても好きです。
「君はパーフェクト」のキャラクター造形で好きなのは、この過剰供給の性分と、人をダメにしないという感覚と、人を好きになるっていう心情がそれぞれ独立しながらちゃんとひとりの中に詰まってるところなんです。
過剰供給を受け入れてくれるところも好きだし、それで自分が安定するのも確かだけど、それは要素のひとつであって理由のすべてじゃない。
純粋に、単純に、好きという気持ちがある。
すっかり過剰供給者の創也くんの話ばかりになってしまったけど、この作品がなんで素敵なのかっていうのは後書きのコメントが全部あらわしてる気がします。
パーフェクト!