恋の話がしたい|ヤマシタトモコ【全1巻】
うまくいかないと端から玉砕覚悟だったものが偶然うまくいってしまって狼狽しつつ過ごす二人の話『dialogue』(※主に狼狽して混乱しているのは片方です)と、
未送信メールに込められた恋心をひたひたと描いた『Re:hello』、
2月のバレンタインとサンタクロースが入り交じる駆け引きの話『フェブラリー・メッセンジャー』、
SM的な意味でドMでストレートの営業マンとSMは新しい扉でゲイのクリエイターの話『スパンク・スワンク』
4編から構成されている短編集です。
とにかくもう私は、
『Re:hello』の話がしたい。
ヤマシタトモコさんの作品を紹介するたびに、
会話が好きだ
モノローグが好きだ を連呼してるんですが、
Re:helloに凝縮されたこの破壊力たるや。
気をつけろよ。泣くからな。泣いちゃうからな。
Re:hello この破壊力がすっさまじいからな。
すっさまじいんだよ、ほんともう、込み上げてくる。
分かるか、分かりますか、少なくとも覚えがあるよ。
送れなかったメール、書いて途中でやめたメール、
ただの挨拶ですら送れなくなり、
もはや送るのを諦めた吐露先となっているもう使わない旧型の携帯電話。
それでもわずかな「何かが届くかもしれない」の可能性が捨てきれなくて、解約も出来ない。
わずか数文字、ツイッターよりも短い文面に愛しさも悲しさも淋しさも全部込められている。
それもただの挨拶文のような中に、すべて凝縮されている。
この作品で何が好きって、
描かれる背景は本当にわずかなのに、そこから確かに描かれている強烈な、恋心。
まさか2P分のメール文面で嗚咽するほど泣かされるとは思わなかったよ。
しかも文面も決してイベントのような大きな出来事があって書かれているものではないのが分かる。
本当にふとした拍子に思い出して、書いて、でも送れずに残してあるだけなんだろうということが分かる。
またメールの文面が徐々に徐々に、相手に送るようなものから
自分に言い聞かせるような、それこそ誰にも言えないからしたためたようなものに変わっていく様子も良い…。
メールを偶然見てしまうのは女子高生で
恋も未だその手の中にあるようでもう少し先にあるような絶妙な年齢の子で、
メールをしたためていたのは恋だけではなかなか暮らしていかれなくなる程の年齢の叔父さんで、
この対照もすごく好きなんだ。
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