Like a dog,as a dog|田中鈴木【全1巻】
BLとはちょっと違う感じかもしれない。
ジャンルとしてはファンタジーになるのかな。
「生き神様」に人間にしてもらった動物たちのお話が詰まった短編集です。
お礼が言いたくて、伝えたい何かがあって人間にしてもらって、
相手がそれを信じたら動物たちは再び動物に戻るのだけど、
色恋だけではなく、ものすごく健気で、ひたむきに相手を想う様子が詰められてて
泣くわけです。
じわっとくるんだよ、こう…じわっと。
堪らないのは、もう根本的に出てくる動物たちは「人が好き」なんだよ。
人を信用して、人が好きなんだ。
命を助けてくれた相手に礼を言いたかった犬がいて、
自分が愛しているように、自分もまた愛されていたのか知りたがった猫がいて、
ただただ幸いかどうかを確かめるためにキューピッドになる小鳥がいて、
自分を好きだと言ってくれた少年の側にありたかったキリンがいて、
その真摯な問いかけへの答えになるのが「動物に戻るか否か」っていう裁定にも近い絶対的なものなのがまた良いんだ。
たとえ人の姿のままであって欲しいと思っても、
それを願うこと自体が元々動物であった彼らを受け入れることであり、
再び言葉が通じない関係に戻ってしまう。
とにかくひたむきな動物たちの姿と、
信じていると言葉だけなら言える人の姿と、
けれど本当に彼らの言うことを信じられるようになる程に通じ合ったなら
同じようには過ごしていけないっていうのが、もうすごく好き。
作品自体は、冒頭で話した通り、BLのもう一歩・二歩手前にいる状態の話です。
ただBLに限らず、何かから何かへひたむきに寄せられる健気なものを見ているのが好きなら
とても切なくて癒されると思う作品です。