すずろ古書譚|伊東七つ生【全1巻】
物語の中に物語がいくつも入ったこの構成がミクロとマクロの視点を展開させてくr(ろくろ回し)
ほんと伊藤先生のね、物語の中にある物語構成が好き。
こういうのもメタファーっていうのかな。
あるひとつのAという関係性が相似形をもって別の関係性Bに繋がって、Aがあるから今度はBの別の面が見えてくるっていう。
あっだめだ、圧倒的に知力が足りない(Wikipedia見ながら)
伊藤先生のこの「物語の中の物語」要素がぎゅっと詰まってるのがこの作品だよ。
本とは読むだけではなくそれに連なる物語をも楽しむものだ、というオーナーの言葉と共に、
古書店に訪れて、出会って、変化していく人々の話。
ジャンルはBLで主人公ふたりも恋仲ではあるけど、恋模様を楽しむというよりも、
まさに前述したオーナーの言葉「それに連なる物語を楽しむ」状態になれるところがとても好きな作品です。
すごく好きなのがねーーーーーー
物語を体感しながら、その背景を感覚で得ていくところなんだ。
例えば「煙草が焼け落ちるまでじっと座っていた」主人公は、一体どれだけの時間を過ごしていたのか。
作中で描かれていた大学のゼミエピソードの話です。
本の一節をひたすら読み解いていく、という設定のエピソード。
煙草が焼け落ちるまでは大体(モノにもよるだろうけど)吸っていたり風が強ければ5分ほど、吸わずに持っていたら10分ほど。
この時間を、閉ざされた部屋で主人公は何を思いながら過ごしていたのか。
これはあくまで物語の中の物語の話、エピソードではあるのだけど、出来事や事実・描写の裏側にどれだけの物語があるのかという広がりがすごく丁寧に描かれているところがとても好きなんです。
これは単純に「煙草が焼け落ちるまで座り込んでいた登場人物がどれだけキてたか」を理解するためのものではなくて、「煙草が焼け落ちるまで座っていた」その状態を体験して体感してその後ろの広がりを見ていくことで、
あの物語の背景、彼の成り立ち、彼が彼たる要素、それらに気付くアンテナが広がっていく。
その感覚は視野が広がるというひとことになってしまうかもしれないけど、
通り過ぎる彼らや、目の前にいる彼らに、「見えないところがあることを知る」っていうこの感覚がすごく好きなんだ。
「物語の中の物語」と「それに連なる物語」がキャラクターたちの体験や状態と合わさりながら丁寧に積み重ねられていって、
さらに好きなのが
広がったアンテナで見る世界はやはり自分と繋がっているっていうところなんだよーーーーーーー。
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