囚人の島~白い世界に君がいた~|いもあん【全1巻】
迷い人シリーズの作品で、罪を犯した人間が閉じ込められる何もない島にいる囚人と、偶然そこに迷い込んでしまった迷い人のお話。
いちばん破壊力が高いと思う。心して読まないと抉られて死んじゃう。
迷い人は、その世界に何らかの変化を起こすために神様が呼ぶのだということをシリーズの他作品で読んだんだ。
それが持ち得る知識や能力による恩恵である場合もあれば、
ただ「誰か」のための迷い人になることもある。
迷い人シリーズの中でも、能力によって神様に呼ばれた(それでもちょっと特殊ではあったけれど)のが、雨降らしの森。
誰かのための迷い人になったのが、狂い森の町。
今回の迷い人は、恐らく二作品目にあたるのだろうけど、後者です。
そして他作品を読んでおくと、迷い人が何なのかとか世界観が把握しやすくて良いかと。
救われたんだか救われないんだかほんともう分からない。
救われたことが救われない。
救われないのに確かに救われているのがつらい。
段々ゲシュタルト崩壊してきた。救いとは何だ。
ただもうひたすらに、この優しい会話を見て欲しい。
会話が優しければ優しいほど、
囚人の罪の重さと取り返しのつかなさを思い出して、死ぬほど切なくなって欲しい。
まるで寓話のような雰囲気のある作品なんだ。
何でこの作品がここまで刺さって読む度に涙腺壊されてしまうかっていうと、
あまりにも「祈り」の作品だからなのかも知れない。
迷い人はわずかな間だけ世界にやってきて、少しだけすれ違って跡形もなく居なくなってしまう。
そのわずかな間に世界や誰かに何かをもたらしていく。
囚人にも交流を通して、過去を悔やむ気持ちや慈しむ気持ちなんかの、
とても人間らしい優しいものをもたらすのだけど、私がいちばん好きなのはその後なんだ。
他2作品の迷い人シリーズは、ネタバレ上等だけど何だかんだ共に居られる。
明確に別れてしまうのは、この作品だけなのではないかな。
では別れたあとに何が残るのかというと、違う世界にある君に幸あれという、祈り。
誰かのために祈れる、誰かの幸を祈る、ただ残されたこれだけの事が、
ものすごく悲しくて尊くてやっぱり悲しい。
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