年々彩々|秀良子【全1巻】

年々彩々

年々彩々

[著]秀良子

●著者 秀良子
●発行 祥伝社

落語「貧乏神」をベースにした「金魚すくい」、「寿限無」をベースにした「デラシネの花(前中後編)」で出来ている作品。
展開の巧さ、回収の妙を楽しむならデラシネの花、ひたすらに静かな余韻に浸りたい時には金魚すくいがおすすめです。
ちょうど先日、落語心中二期を一気に見終わってしまったので倍々で心にクるぞ。

で、私は金魚すくいの話がしたい。
ああ…私落語心中でこんな男の噺聞いたことある……と思ってしまうくらいにはダメな男と、
そういうダメ男にことごとく絆されてしまう貧乏神のお話です。

ばか! 家賃滞納する長屋暮らしの男にろくな男はいないんだよばか!

貧乏神と、貧乏神にすら金をせびり貧乏神の稼ぎで呑んでしまうようなダメな男の
わずかな期間の生活風景が、どうしてこんなに心にクるんだろう。
読後しばらく余韻に浸って、じんわり泣けてしまう。

とにかく何と言うか、「情」の話なんですよ。
所作のひとつ、上げた顔にうつる夕暮れ、買ってきちゃった金魚、いつの間にか馴染んでしまった長屋ぐらしに、働きたくないと膝の上でゴネるダメ男。
好きだ愛しているという恋慕より、ともすればもっと仕様もない「情」の話。

情が湧くとか、情があるから離れられないとか、とかく恋愛に比べれば退化物として扱われがちな「情」ではあるものの、
しかしこの「情」の、なんと優しいこと。

のんべんだらりと生きてく男の浮世離れし過ぎた善良さが、余計に心に染みるんだ。
妬みも嫉みもしない。
生活力は皆無だし人の金で酒を呑むような男なのに、悪人ではない。
でも悪人じゃないからって、生活力の皆無さも人の金で酒呑む性分はやっぱりダメなままで、
そこらも全部ひっくるめた上で、死神としてお迎えに上がるっていう静かな描写がすごく良い。すごく良い。

喜怒哀楽のいずれにも括れないような感覚でもって進んでいく話を見るたびに「情」の単語がじわじわ浮かぶ。
秀良子さんの作品の、言外に流れる空気感がとても好きで、
年々彩々は特にその空気感が堪らない。
湧いた情のひとつひとつが、言葉ではない画面から伝わってくるのがすごく好き。


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