吸血鬼と愉快な仲間たち|原作:木原音瀬/画:羅川真里茂【現4巻】

よろしいならば吸血鬼だ。
この作品の前にもう一個吸血鬼ものを買ってます。
もう分かったよ、好きだよ吸血鬼!!!!!!
昼は蝙蝠・夜は人型になるなり損ないの吸血鬼アルと、エンバーマーの暁さんのお話。
もともとは木原音瀬先生のノベルズで連載中で、羅川真里茂先生の作画でコミカライズされた作品です。ジャンルはどちらかと言えば少女漫画ファンタジーかも。
rentaさんではブロマンスにもジャンル区分されてます。
羅川先生、ニューヨーク・ニューヨークも花ゆめで描いてらしたしな。名作ですよ。
とにかく好きなのが、この吸血鬼の描かれ方だよ。
アル君、吸血鬼8年目というこれまたとても微妙なラインに居て、
死なないだけの本当に普通の青年なんだよ。
事故で半端に吸血鬼にされてしまったものだから昼の仕事も出来ず人から血を吸える牙もないのに主食だけは血になって、その上丁寧に埋葬までされて弔われてしまって家にも帰れない。
でも死なないし、死ねない。
リリカルな「死ねない」じゃなくて、ガチの「死ねない」。
死ねない身体は人としての自分の尊厳を思う存分打ちのめしてくれるし、もう獣なのか人なのか、もしかしたらそれですら無いのか、ゆるゆると諦めていくしかなかったアル君の姿がすごく悲しいし、すごく切ない。
このすごく悲しくてすごく切ない、アル君が過ごした絶望していった時間の表現が、素っ裸で捕縛されて尋問されて(何しろ冷凍肉にまぎれた蝙蝠姿でアメリカから日本に輸入されてしまったので怪しさしかない)毛布をかけられた瞬間の『今、人扱いをされた』っていうところなのが最高だと思うんですよ。
吸血鬼と愉快な仲間たちは、主軸にいるのは半吸血鬼のアル君なのだけど、
あくまで描かれているのは人であるところがすごく良いと思うんだ。
飢える辛さ、それでも肉にかぶりつくしかない遣る瀬無さ。
コンビニに行ったって自分に必要なものなんて無いから悲しくなって出てきてしまう。
人である青年のアル君が感じる、人ではない自分への悲しさが物凄く際立つ。
それでもアル君は人なんだと思う反面で、だからアル君は人なんだという気持ちにもなる。
人である吸血鬼としての描かれ方がすごく好きなんだよ……。
エンバーマーの仕事を手伝うかわりに捨ててしまう血液を貰う姿が、アル君が今も持つ優しさや誠実さをあらわしていてすごく胸が締め付けられる。
亡くなった人に謝罪と祈りを捧げて十字を切る吸血鬼なんて、こんな吸血シーン見たことないよ。
誰かの役に立ちたい、という気持ちの美しさが吸血鬼のアル君にしか出来ない形で昇華されていくのが、すごく好きなんです。
ちなみに2巻は、蝙蝠姿のアル君がものすごくものすごく痛いことになってしまうので、
動物好きだったり蝙蝠姿のアル君の可愛さにときめいた人は本当に注意して欲しい。
私は読後しばらく凹んで作品が読み返せなかったぞ。
ちなみに今も該当シーンは読めないから飛ばしているぞ。