あやしの湯ももいろ美人|雨隠ギド【全1巻】
めっちゃ癒やされた。
駅前再開発のために、駅前住人に理解を求めるべく訪れた担当者の七尾さんと、駅前の大地主さんが運営してる銭湯を運営したり入り浸ったりしてる妖怪さんたちの中にいる、乙丸さんのお話。
日常風景に溶け込む人外が好きだとすごく癒やされると思う。
しかも題材は銭湯だぜ。
キャラクターの皆さんがほころんだ顔で湯船に浸かってる姿見てるだけで癒やされてしまう…。
大きなお風呂は良いものだ……。
そしてちょいちょい ( ゚д゚ ).o0(ぱんつはいて!!!)って出てくる子狸妖怪の可愛さよ。せやな、ぱんつはちゃんとはかないとな。
あやしの湯の好きなところはね、主人公の七尾さんの、とても誠実なところだよ。
感情表現に乏しいというよりも、感情そのものの起伏が薄いタイプなので人からは鉄の心臓と呼ばれたり褒めたつもりがそう伝わっていなかったり、人形めいて見られることが多いのだけど、でも決して礼を欠くようなことはしないんだ。
とても素直に(そして言葉を選びながらのようにも見える)状況や気持ちを、言葉と行動で表現する姿が誠実さに溢れていてとても好ましい。
作中ではそんな人物特性が「処女性」としてあやかし達からはとても美味しそうに見えると表現されています。
身体的なものではなく、そして無垢さというよりは素直さという感じ。
反応や行動の平等性というか、自分が驚いたことを大笑いされても一緒に笑い話に出来てしまう様子だとか。
またね、この処女性を作中で説明するシーンがすごく良いんだよ。
これは作中からの引用ですが、
「良い悪いとかじゃないんだよね 汚れって身体につくよけいなものって考えてみて 飾りけがないって表現あるでしょ」
っていうこの表現!
人を傷つけないことだったり、清さや正しさであったり、そういう聖人君子が持つものではなく自由気ままな爛漫さとも少し違う、ただ自分の感じることや周囲に対して素直であることが処女性として表現されているのがすごく好き。
この良くも悪くも自然体な素直さがある場所では疎まれるけど、ある場所では好まれるっていうのも、すごく救いがあって優しいよね。
こう書くと、まるで七尾さんひたすら素直な人に見えてしまうけど、七尾さんの魅力は、誰かの過去を本人以外から聞いてしまった時に罪悪感を覚える誠実さだと何度でも言うよ!
その誠実さで、乙丸さんとの距離がじわじわ縮んでいく様子が癒やされて堪らない。
あ、今さら気付いたけど、作者さん甘々と稲妻を描かれた方なのね。
こちらの方は試し読みの範囲でしか読んだことがないんだけど、「食べ物の話好き」のアンテナになんとなくずっと引っ掛かってる作品でもあります。
そして何となく納得したのが、銭湯、という場所の選択。
生活や、そこで営んでいる人々(今回は人外だけど)をすごく優しく描かれる人だなあ。