ユレカ|黒沢要【全1巻】
バンパイアものが!!!
好き!!!!!!
いや別に吸血鬼が堪らなく好きっていう訳ではないんだけど、
概念がとても浸透しているモチーフなので、作家さんごとの個性というか、
様々なバンパイア像が見られるのがとても好きなのです。
魔法使いや人外くくりだと幅が広くなりすぎてしまうので、バンパイアくくりはとても丁度良いのです。
こちらもバンパイアモチーフで、純血、半魔、亜種と成り方でちょっと種族が分かれます。
半魔と亜種のふたりのお話。
表紙だけ見るとちょっと殺伐とした風味がありますが、とても繊細なお話だよ。
ユレカは、
生きなければならない理由に囚われてやっと心許なく歩き出した亜種のシュクレイと、
生きていてはならない理由を不死になることで縛り付けて延々と贖罪を続けている半魔のステファンの
旅模様が描かれています。
道中でしっかりと、シュクレイの旅の理由や目的、ステファンの変化なんかも繊細に描かれているのだけど
私がとても好きなのはこのステファンの穏やかさ。
そしてステファンを通して描かれる新しいバンパイアの姿。
年を取らず、人の血を飲むというバンパイアの基本設定はそのままなのだけど、
決して忌み嫌われるものだけではなく(作中では追われるヴァンパイアの姿も描かれるけどね)
変わらずあるものの象徴として描かれているところがすごく好きなんです。
たとえば日々のぼる太陽のように、日々沈む月のように
姿形の変わらないものは、年を取り変わり続ける人々にとっては礎にも成り得る。
そしてそのステファンが新たに生まれた子に祝福を与える姿がとても好きだ。
家庭を持ったり一箇所に逗まったり、人の営みとは少し離れたところでステファンは過ごしているし、
変わらないものとしてあることそのものがステファンにとっては罪過であるけど、
人々に祝福を与えるという形で交わっている姿がとても美しいと思う。
それでもやっぱりステファンには血が必要だし、大事なものと引き換えに手に入れた不死なんだよ。
その裏腹さが余計に優しく響いてくる。