雷神とリーマン|RENA【3巻】
雷神とリーマンの好きなところはさ、
コメディ箇所もしんみり箇所もそうなんだけど、とにかく優しい。
雷遊さんの慈しむ視点が優しくて力強くて、とてもストレートなんだ。
頑張ってるなら胸を張れば良いし、頑張れないのも立とうとした証だし、
誰かを助けようと思えることを誇れば良いし、泣いてるよりは笑顔の方が愛しい。
またすごく良いなあと思うのは
説教臭くなりそうな正しさ論や優しさ論ではなく、
それらの言葉がキャラクターひとりだけに向けて語られているからかも知れない。
「君」は良い人であるし、「君」は頑張っているし、「君」の姿はとても素晴らしいということを
相手にだけ伝えてくれてる。
だから余計に雷遊さんが1:1で向かい合っている感じがすごく伝わってくるし、
向かい合った誰かを素直に称賛する姿にぐっと来てしまう。
雷遊さん基本的に人になりたくて人界にやってきて
大村さんと心温まってしんみりする人間ライフを送っているんだけど
この人間ライフの送り方見てると、自分自身も人間ライフ一緒に送ってるような気持ちになれるんだ。
美味しいごはん食べてー、風呂入ってー、働いてー、よく寝てー、
汗かいて、花火や海を見て、田舎町で降るような星空を眺めながら
自分がこの後どう生きていくのかにそっと思いを馳せたり。
雷遊さんにひとつひとつ体験させていく大村さんのナビゲーションの元に、
自分もまるでもう一度人らしい生活してるような感覚になる。
人並みにそれなりに暮らしていると思っていても
どこかおざなりになっている部分や、どこか削ぎ落として優先しないといけないこともある。
別に作品は「だからお前も頑張れ」なんてこと一言も言ってこない。
ただ、何となく、ああ明日ちょっと散歩でもしてみよう って少し一息つけるような気がする。