テオ-THEO-|あおのなち【全1巻】
魃(バツ)と呼ばれる神様の青年と、神様への贄として付き従う血筋に生まれた少年のお話です。
舞台は現代のようで現代ではない、どこかファンタジーでノスタルジックな「どこか」。
かといって完全な異世界ファンタジーではなく、今と重なる少しだけ違う場所という感じです。
作品を読んでいてたまに、「ああ、この一言のために、私はこの作品を選んだのだ」みたいな感覚になることあるじゃないですか。
台詞であったりモノローグであったり、際立って刺さる一言がある作品ってあるじゃないですか。
テオがまさにそれでした。
私が一気に刺されたのが
ぼくが このかみさまを 看取るんだ
このひとこと。
描かれる魃という神様は、体内に宿した熱で水害から人を救い、
その熱故に干ばつを引き落とし追放された歴史を持っています。
そして追放した罪滅ぼしに、付き従う人間が選ばれます。
表題にもなっているテオ君が、その付き従う側の人間の一族です。
好きなのが、この魃という神様と、その扱い。
そもそも魃は短命なのがとても堪らない。
神様なのに! 神様なのに!!!
寿命はせいぜい20年から30年。罪滅ぼしと言いながら、人はその生涯を捧げる訳じゃない。
あっという間に死んでしまう、外れに追いやられて、その上まだ良いように扱われている神様。
自らの短命を嘆いたのか、はたまた別の理由か、人間との交配実験を行った魃もいる。
飽きて実験という風でもないしなあ。
この魃自身から出てくる生への執着が、また神様らしからぬ感じがして良いのですよ。
神様というよりも、魃という種族のようにも見える。
作者さんは、人であるテオ君と接することで魃であるレイ君が様々なものを受け取り
それは決して良いものだけではないということを後書きで書かれているのですが、
作品を読んだ限りだとテオ君の浮世離れっぷりの方がある意味神様ぽく見えてそれも面白い。
ヒトにとっての魃は、はじめから見送る相手なんだ。見送るために側にいる。
世話をして見届けてそこで役目が完成する。
魃にとっては終わりにあたるその瞬間も、ヒトにとっては通過点でしかない。
テオ君に見えた神様ぽさは、この寿命差からくる「見送る立場」の徹底があったからなのかも知れない。
でも情を交わすうちに、必ず訪れる見送る日の意味合いが変わってしまった。
レイ君を見届けた後もテオ君の未来は続いていく。
先ばかり見ると悲しさしか無くなってしまうんだけど、
作品は春から冬まで一巡して、再び春を迎えて終わります。
そしてこれも書いておきたい。
テオの美しさはねーーー
彼らの暮らす家の細かな装飾にあふれているんだよ!!!
フェチをくすぐられてたまらないよ!!!!!
天蓋付きのベッドや、ダイヤ格子の嵌められた階段上の大きな窓に、十字格子の嵌った丸窓、
飾り枠のついたてっぺんの丸い扉の奥には吊り下げ灯の連なる廊下。
大きな採光窓の下にはカウチがあり、四角と丸のクッションが置かれていたり、
インテリアのひとつひとつにこだわりと愛を感じる……。
この家に行きたい……あわよくば二泊三日くらいしたい……。
台所にはハーブとか吊るしてあるんだよ!! かわいい!!!