勇者IN魔王んち|笑平・犬時【全1巻】
不老不死のさいつよ魔王ウィスペドさんと、特技は笑顔の勇者(らしき)・トゥルー君のお話。
魔王様の元に住ませてくれと押しかけるトゥルー君と愉快な魔王城の仲間たち。
絵柄に結構クセがあるし、割とコメディ色も強いものの、すげえ泣かせにくるんでご注意ください。
これ何か思い当たる節がある人の心にはものすごく刺さると思います。
そうさ、まんまと刺さったよ。無理だよこれ、読む程に泣くもん。
トゥルー君も魔王様も、規格外の力持ちに生まれてしまったが故に
村を追われたり村に置いていかれたりして、「幸福」のハードルがやたら低い人らです。
勇者IN魔王んちはな、
意外と面倒見の良い孤高にならざるを得なかった魔王様と
ひたすらに太陽属性でアホの子トゥルー君っていうあまりに分かりやすい組み合わせに見えつつ
実はすごく痛みや悲しみや淋しさに誠実な反応をしてくれるところがすごく良いんだよ。
不老不死でも身体が吹き飛ばされたら痛いに決まってるし、はやく治って欲しい。
泣きそうな笑顔を見てたら悲しい。
村ごと捨てられた過去なんて面白がりながら聞くものじゃないし、
貰ったものは返したい。
こんな当たり前なことに、当たり前な反応を返せるトゥルー君と魔王様に、もうこっちが泣きたい。
トゥルー君、基本的にとにかく表情豊かでよく笑う精神年齢低い子なのだけど、
それは育ててくれる人も教えてくれる人も誰も居なかったからなんだ。
泣いたり悲しんだり出来るほど育つ前に捨てられてしまったんだ。
だから、表情は豊かだけど自分の感情を表現するのはひたすら拙い。
でも決して何も感じていない訳ではなくて、言語化出来ないだけで
捨てられたことも、村から疎まれてたことも分かってる。っていうのが、分かるからつらい。
そして魔王様は自分がそうだったからこの辛さをよく知ってる。
痛みや悲しみに誠実なのはトゥルー君だけでなく、魔王様もまたそうであるところがすごく良い。
この底抜けの明るい笑顔してるトゥルー君がさ、誰かに見えて仕方ないんだ。
自分の初期装備が周囲とそぐわなくて、そのすり合わせも出来ず違いも理解しきれないまま、
ここまで来てしまったっていう姿が、どこかで見た誰かに見えて仕方ないんだよ。
あと少なからず覚えのある自分の姿にも何となく重なってしまう。
楽しい場所にいると誰かに怒られるような気がする ってあたりで、もう涙腺崩壊した。
悲しい話ばかりに焦点を当ててしまったけど、
魔王様が絆されていく様子も、ちょっとずつの接点を大事にしてくトゥルー君もとても可愛いし
「楽しい場所にいると誰かに怒られるような気がする」 けど、
そんなことなかった!!って終わりだから大丈夫だよ!