鴆-ジェン-|文善やよひ【現在1巻】【続編連載中】

舞台は中国のようなとある国。
路上の市場で売られているのは、毒を食み美しい羽根色にする獰猛な鳥人・鴆(ジェン)。
元鴆飼・フェイと国一番と名高い鴆・ツァイホンのお話です。
何しろ鴆が美しいいいいいんだよおおおお。
このデザインほんっと好き。
もーーーほんと美しい。この美しさだけで損はないほど美しい。
モノクロの紙面に極彩色が見えるような鮮やかさ。
またこの中国感溢れる重厚で刺繍たっぷりな衣装とあいまって、デザインが秀逸すぎる。
すごく個人的にフィギュア化したら映えて映えて仕方ないんじゃないかと思ってます。美しいよう。
鴆で特に好きなのは、
人外ものでありながら「人になりたい」という選択肢が一切ないところ。
ないどころか、私も何度も読み返して今やっと気付いたくらいに、「人になりたい」「同種になりたい」という感覚がない。
これすごくないですか。
鴆と鴆飼という設定がしっかり出来上がっているところもそうなのだけど、
鴆だから与えられたものと鴆だから享受出来たものが描かれているところがすごく好き。
中でも好きなのは「手」の使い方。
そしてやっぱり、「鴆」そのものの立ち位置。
観賞用として育てられながらも、その羽根は猛毒を持ち、
またその美しい猛毒の羽根を愛でるために人は手ずから毒を食わせ、
その毒がまた人を遠ざけるっていう。この。この!!!
近づけば殺してしまうことも分かっているのに、近づかねば生きていけないっていう。この。この!!!!!
美しくない鴆は観賞用としての価値が著しく落ちるものだから、その最期は悲しいものになってしまう。
だからこそ鴆を生かしておくためには毒々しさを保ち続けなければならない。
幸福な鴆を育てるためにそれこそ身を削り、自分を殺させるまでの毒を与えてきた主人公の兄と、
害をなさないように、毒を持たずに育ててしまったが故に鴆を殺されてしまった主人公と
このあくまでも主軸にある「鴆という生き物」と「鴆飼という生き方」っていう描き方がすごく好き。