フェイクファー|虫歯【1巻】
読み終えてから、「こ、これが演出力……!?(゚A゚;)ゴクリ」ってなった作品。
いや画面がすごい好きなのは確かなんですが、自分の考える演出力に何も自信がもてない。
少し前まで普通の友人から、セフレに昇格……昇格か?これ。
セフレからもう一歩先に進んでいく二人のお話。
好きだから大切にするしセフレではない関係でいたい雨井さんと、
好いて好かれるような世界なんてどこか遠くだと諦めていた烏星さんが主人公です。
実際には進んだその少し先の話の方が多めです。
フェイク”ファー”のタイトルどおり「遠く」がひとつのキーワードとして話は進んでいくのだけど、
何しろ好きなのが、「どこか遠くへ行きたい」 この行き先なんだ。
「どこか遠くへ行きたい」で始まって、
ハワイ(※T取県Y里浜町/合併前の町名:はわい町)に行くふたりの様子から始まります。
ちなみにはわい町の湖ではしじみが獲れます。
「遠くへ行きたい」からはわい町にやってきて、
じゃあ遠くってどこなんだろう、何から遠ざかろうとして
何に近付こうとしたのかっていうところが語られるシーンが最高に好きなんだよおおおお。
遠くに行けると思って取った選択肢があって、
じゃあ行けたかと言ったらそんなことはなくて、
その選択肢が近くにある生活になっただけだったと夜の海で語るシーンがすごく好き。
普通の人と生きる場所が違うなら、生きやすい世界に行けば良い。
どこか遠くにそんな世界があるだろうと思ったのに、
でもそんな世界なくて聞こえるのは自責の声ばかり。
その声で全部全部静かに諦めてきてた烏星さんが、
でも自分にだって幸せがあるんだって声を全部散らすシーンもすごく好きなんだよおおおお。
烏星さんにだけ聞こえるカラス達の声を、烏星さんが散らしたのがすごく好きなんです。
是非後書きで、表題『フェイクファー』の由来も読んで欲しいんだ。
細かなダブルミーニングが散りばめられてて、
すべて後書きまで読み終えた後に作品とリンクしてる箇所を見返して「ああーー!」ってなる瞬間が最高に楽しい。
どこか遠くへ行く錯覚、とあとがきで表現されているのだけど、
遠くに行きたい気持ちと、思えば遠くまで来たなあという感慨が
作品通してじわじわ染み込んでくる感じがとても心地良い……。